日本の防衛産業2026年展望:成長株候補企業の徹底分析
はじめに:戦後最大の転換期を迎える日本の防衛産業

日本の防衛産業は今、戦後最大の転換期にあります。政府の「防衛力の抜本的強化」方針に基づき、2023年度から2027年度までの5年間で総額43兆円という巨額の予算が投じられています。
特に注目すべきは、2026年度(令和8年度)の防衛関係予算案が9兆353億円に達し、前年度比で3.8%の増加を記録したことです。これは単なる予算増ではなく、防衛産業が「コストセンター」から「成長産業」へと本格的に転換する局面を意味しています。
民間技術とのシナジーが生まれつつある今、防衛産業はかつてのイメージを大きく塗り替えようとしています。
防衛産業を牽引する5大企業の現状
日本の防衛装備品生産は、5つの大型企業を中心に展開されています。各社の戦略と成長性を見てみましょう。

三菱重工業(7011) は、日本最大の防衛企業として、次期戦闘機(GCAP)、長射程ミサイル、宇宙防衛領域で主導的役割を担っています。ミサイル関連の大規模受注が継続する中、2025年4-6月期には事業利益が24%増を達成。時価総額は2年で約6倍に膨らむなど、市場からの高い評価を受けています。
川崎重工業(7012) は潜水艦建造を柱として、航空機事業や無人アセット開発(K-RACER)に注力しています。多層防衛構想の重要な一翼を担う同社は、防衛事業の売上見通しが従来想定を上回る可能性を示唆するなど、成長期待が高まっています。
IHI(7013) は航空エンジン技術で独占的な地位を確保。艦艇向けガスタービンエンジンでも主要サプライヤーとして、防衛受注の拡大により最高益を更新しています。ROE上昇傾向と堅調な受注残高が特徴です。
NEC(6701) は防衛省の重点分野である宇宙・サイバー・電磁波領域で強い競争力を保有。利益率が10%超に向上し、安全保障関連を次期中期計画での成長エンジンに位置付けています。
三菱電機(6503) は誘導弾、警戒管制システム(JADGE)、AI技術を通じて通信・電子機器分野を支配。防衛技術の民間転用にも積極的で、3年間で1兆円の成長投資を計画しています。
防衛予算を動かす3つの重点分野
スタンド・オフ防衛能力
約3,000kmの射程を目指す国産ミサイル開発は、防衛予算の大きな柱です。
12式地対艦誘導弾能力向上型など複数プロジェクトが進行中で、三菱重工業が中心的役割を果たしています。この領域への投資拡大は、防衛産業全体の景況感を大きく左右する要因となっています。
無人アセットの急速な進化
ドローンや無人水上艇といった無人システムは、人的損失を抑える重要な防衛手段として位置付けられています。2026年度予算案では、多層的沿岸防衛体制【SHIELD】の構築に1,001億円が計上されており、川崎重工業やその他メーカーの無人機R&Dが加速しています。

新領域での優位性確保:宇宙・サイバー・電磁波
従来の陸海空を超えた「新領域」での競争力確保が急務となっています。
NECや三菱電機などの電子・通信企業の役割が急速に拡大しており、今後の予算配分で最も高い成長率が期待される分野です。

防衛産業の直面する課題と対策

コスト急増の現実
物価高と円安の影響は無視できません。輸入部品の価格高騰に加え、国内生産でもコスト増が続いています。具体的には、陸自のUH-2ヘリが2025年度の33億円から2026年度予算案では46億円へと、わずか1年で39%も上昇しているケースもあります。
サプライチェーン維持の課題
下請け企業の経営基盤強化が急務です。防衛省は企業側の利益率を従来の約8%から最大15%まで引き上げる新制度を導入し、生産基盤の安定化を図っています。この施策により、中小企業の防衛産業参入も促進されると予想されます。
中長期成長が期待される3銘柄
第1位:三菱重工業(7011)
最大の理由は、同社が日本の防衛予算増額の最大受益者であることです。スタンド・オフ・ミサイルや次期戦闘機の開発主体として、防衛事業の売上規模は群を抜いています。受注が長期にわたるため業績の安定性が高く、グローバルな「ディフェンス・ストック」としての評価が定着しつつあります。
第2位:NEC(6701)
防衛の主戦場が物理的な兵器からソフトウェア・通信へシフトする中、同社が得意とする「宇宙・サイバー・電磁波」分野への投資比率が高まっています。防衛事業の利益率が10%超まで改善しており、高収益事業としての再評価が進む可能性があります。今後の構造的成長が期待できる銘柄です。
第3位:IHI(7013)
航空エンジン事業における独占的な技術力が競争優位性の源泉です。防衛のみならず民間航空機需要の回復も追い風となり、ROE上昇傾向と堅実な受注残高を背景に、業績の増額修正期待が高い銘柄として注目できます。
結論:「国策」背景の成長株へ転換する防衛産業
かつての日本の防衛産業は「利益が出にくい限定的な市場」の典型でした。しかし今、国家戦略としての防衛力強化と、装備品の海外輸出解禁に向けた議論により、大きな成長ポテンシャルが顕在化しています。
投資家として注視すべきポイントは、個別の装備品採否ではなく、各企業がいかに防衛技術を民間のDXや宇宙産業などの成長分野へ転用(スピンオフ)できるか、その創造的な「攻めの一手」にあります。
指名停止リスクや為替変動といった変動要因は存在しますが、長期的には防衛産業は確実に日本経済の成長エンジンの一つとなる可能性を秘めています。

