【2026年日本市場】GX(グリーントランスフォーメーション):20兆円の国策が動かす脱炭素革命
GX経済移行債20兆円:戦後最大級の産業構造転換

政府が進める「GX経済移行債」による20兆円規模の支援を背景に、2026年は脱炭素技術の「社会実装・商用化」が加速する歴史的な転換点となります。
これは戦後の高度経済成長に匹敵する、日本の産業構造を根本から変える大プロジェクトです。
2050年カーボンニュートラル実現に向け、2040年には電力部門からのCO₂排出を「実質ゼロ」にするという政府目標が、巨額の投資と技術革新を牽引しています。
この野心的な目標は、単なる環境政策を超え、日本経済の新たな成長エンジンとして機能し始めています。
経済産業省の試算によると、GX関連市場は2030年に130兆円、2050年には220兆円規模に達すると予測されています。これは、現在の自動車産業(約60兆円)を大きく上回る巨大市場の誕生を意味します。
投資・ビジネスの焦点は、エネルギーの「つくる(再エネ)」から「ためる(蓄電)・運ぶ(水素)・減らす(CCUS)」へと明確にシフトしています。
この変化は、単なる技術的進歩ではなく、エネルギーシステム全体の根本的な再設計を表しています。
市場を牽引する3つの重点領域
1. 水素・アンモニア発電:脱炭素燃料への大転換
燃焼時にCO₂を排出しない水素とアンモニアは、火力発電の脱炭素化の本命として期待されています。国際エネルギー機関(IEA)の最新レポートによると、2030年までに世界の水素需要は現在の約3倍にあたる1億8,000万トンに達すると予測されています。
日本では2030年までに以下の導入目標が設定されています:
- ガス火力への30%水素混焼の実用化
- 水素専焼発電技術の確立
- 石炭火力への20%アンモニア混焼の普及
これらの実証実験は既に各地で本格化しており、JERA(中部電力と東京電力の合弁会社)の碧南火力発電所では、2024年から世界最大規模のアンモニア混焼実証が開始されています。
水素・アンモニア発電の市場規模は、2030年には国内だけで3兆円、世界市場では20兆円に達すると経済産業省は試算しています。この巨大な市場機会に向けて、日本企業の技術開発競争が激化しています。
2. 次世代蓄電池:再エネの弱点を克服するイノベーション
再生可能エネルギーの最大の弱点である「不安定さ」を補うため、定置用蓄電池の導入支援が拡充されています。2025年度から開始された「蓄電池等の分散型エネルギーリソース導入支援事業」では、総額300億円の予算が確保されています。
蓄電池市場の成長は目覚ましく、富士経済の調査によると:
- 2023年:約2,800億円
- 2030年予測:約1兆2,000億円(約4.3倍の成長)
- 定置用蓄電池の年平均成長率:25%超
2026年からは、GX投資による税制優遇措置が本格化し、中小企業を含めた設備投資の爆発的な増加が見込まれます。特に「カーボンニュートラル投資促進税制」では、蓄電池システム導入に対して最大10%の税額控除が適用されます。
リチウムイオン電池に加えて、全固体電池やナトリウムイオン電池などの次世代技術も実用段階に入りつつあり、コスト削減と性能向上の両立が期待されています。
3. CCUS(CO₂回収・利用・貯留):排出削減の切り札
排出されたCO₂を回収し、地下に貯留または有効利用する技術が実用段階に入っています。化石燃料に依存せざるを得ない鉄鋼、セメント、化学などの産業において、CCUS技術は脱炭素化実現の鍵を握っています。
日本のCCUS市場規模は急速に拡大しており:
- 2025年:約500億円
- 2030年予測:約2兆円
- 2050年予測:約8兆円
政府は2030年までに年間1億2,000万〜2億4,000万トンのCO₂貯留目標を掲げており、北海道苫小牧や新潟県長岡での実証プロジェクトが本格稼働しています。
特に注目されるのは「Carbon Recycling」技術で、回収したCO₂を燃料や化学原料として再利用する取り組みです。
三菱重工業やIHI、川崎重工業などの重工業メーカーが、独自技術の商用化に向けて激しい競争を展開しています。
注目の上場企業:技術力と実績で市場をリード
三菱重工業 (7011):水素・アンモニア発電で世界トップクラス
長崎カーボンニュートラルパーク:技術開発の中核拠点
三菱重工は、エネルギー脱炭素化に関する技術開発の中心拠点として「長崎カーボンニュートラルパーク」を長崎市内に設置しました。この総投資額200億円超の施設では、研究開発・設計・製造部門が一体となって製品技術の実用化に向けて取り組んでおり、水素製造、バイオマス合成燃料製造、アンモニア燃焼、CO₂回収に関する要素技術開発が行われています。
高砂水素パーク:世界初の一貫検証施設
高砂製作所(兵庫県高砂市)内に設置された「高砂水素パーク」は、水素の製造から発電までにわたる技術を世界で初めて一貫して検証できる施設です。2023年11月には、最新鋭の大型ガスタービン(JAC形)で世界初の水素30%混焼に成功しました。
2023年には世界最大級の水素製造能力1,100Nm³/hを持つアルカリ水電解装置を設置し、製造した水素で大型ガスタービンの実証運転を実施しています。この技術的達成は、水素発電の商用化に向けた重要なマイルストーンとなっています。
アンモニア分解技術の革新
2025年12月、三菱重工は日本触媒と共同で、従来700℃必要だったアンモニア分解を450~500℃の低温で実現する技術の実証に成功しました。貴金属のルテニウムを使わない新触媒により、運転コストを2割削減できるこの技術は、2030年度の商用化を目指しています。
この技術革新により、アンモニア発電の経済性が大幅に改善され、石炭火力からの転換が加速すると期待されています。
世界市場での実績
三菱重工は、グローバル市場での競争力を実証する受注実績を積み重ねています:
- オランダ・マグナム発電所:44万kW、2027年運転開始予定
- 米国ユタ州プロジェクト:84万kW、2025年運転開始
- 欧州の複数の水素発電プロジェクトでも優先交渉権を獲得
同社の2025年3月期における水素・アンモニア関連事業の売上高は前年比40%増の1,200億円に達し、2030年には3,000億円規模への拡大を目指しています。
岩谷産業 (8088):水素サプライチェーンの国内シェア7割
圧倒的な市場支配力
岩谷産業は、外販用の水素販売で国内70%のシェアを保有しており、液化水素に関しては国内唯一のサプライヤーとして100%のシェアを誇っています。大阪府堺市、千葉県市原市、山口県周南市の3カ所で液化水素の製造プラントを稼働し、年間の水素製造能力は1億2,000万㎥に上ります。
この圧倒的な市場地位は、60年以上にわたる水素事業の蓄積によるものであり、新規参入企業にとっては高い参入障壁となっています。
商用水素ステーションのパイオニア
2014年に日本初の商用水素ステーションを開設し、現在では全国に51カ所を展開(2024年時点)。水素ステーションの国内シェアは約35%を占めています。政府目標である2030年1,000カ所の水素ステーション整備に向けて、同社の役割はますます重要になっています。
2024年2月に打ち上げに成功したH3ロケットの燃料にも、岩谷産業の水素が使われるなど、宇宙開発分野でも重要な役割を担っています。
2031年3月期に売上高10倍強の野心的目標
岩谷産業は、2031年3月期に水素事業の売上高を足元の10倍以上の2,000億円規模にする方針を発表しました。この目標達成のため、以下の戦略を推進しています:
- 発電所などの大口需要先開拓
- 燃料電池(FC)トラックなど商用車向け大規模ステーション開設
- 産業用水素需要の拡大
- 海外市場への本格進出
海外展開の加速
2023年度末までに北米で、製造工程でCO₂を排出しないグリーン水素の製造に参入しました。再生可能エネルギーを使った水素製造に取り組む企業との連携や製造拠点の設置を進め、環境規制の厳しい米カリフォルニア州などへの供給を目指しています。

