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2026年「資源自給」への転換点:日本のレアアース産業と主要企業の徹底分析

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2026年「資源自給」への転換点:日本のレアアース産業と主要企業の徹底分析

2026年現在、日本のレアアース(希土類)産業は歴史的な転換期を迎えています。長年、供給の多くを中国に依存してきた日本ですが、2026年1月には中国による輸出制限が改めて強化され、経済安全保障上の緊張が急速に高まっています。

この危機的な状況の中で、日本は積極的な対抗措置を展開しています。特に注目すべきは、「調達先の多角化」「都市鉱山によるリサイクル」「国内資源の開発」の3本柱による戦略的対応です。

その中でも最も象徴的なのが、2026年1月に開始された小笠原諸島・南鳥島沖でのレアアース泥の試験掘削です。この取り組みにより、日本が長期的な「資源自給」を実現する可能性が、初めて現実的なものとなってきました。

EV(電気自動車)向け磁石や高性能モーター、省エネ家電に不可欠なこの素材において、日本の技術力と企業戦略がどう展開されるのか。本記事では、主要企業の動向を分析してみました。

  1. レアアース(希土類)とは何か?
    1. レアアースの定義と構成
    2. レアアースの産業用途:4大用途
      1. 1. EV向けモーター(永久磁石)
      2. 2. 洋上風力発電(ダイレクトドライブ型発電機)
      3. 3. AI関連ハードウェア・データセンター
      4. 4. 省エネ家電と産業用途
  2. 日本の戦略的対抗措置「3本柱」
    1. 戦略①:調達先の多角化
      1. 背景と必要性
      2. 具体的な展開
      3. 効果と見通し
    2. 戦略②:都市鉱山によるリサイクル
      1. 「都市鉱山」とは何か?
      2. 日本における優位性
      3. リサイクルプロセスの流れ
      4. 環境・経済的メリット
    3. 戦略③:国内資源の開発(南鳥島プロジェクト)
      1. 南鳥島について
      2. プロジェクトの進捗状況
      3. 採掘技術の課題と対策
  3. 第3章:主要関連企業の詳細分析
    1. 1. 信越化学工業(株) [コード:4063]
      1. 企業概要と事業ポジション
      2. 主力事業
      3. 財務実績と成長性
      4. 強みと競争優位性
      5. 今後の戦略
      6. 投資家への評価
    2. 2. DOWAホールディングス(株) [コード:5714]
      1. 企業概要と事業ポジション
      2. 主力事業
      3. 財務実績と成長性
      4. 強みと競争優位性
      5. 成長の背景
      6. 今後の戦略
    3. 3. 豊田通商(株) [コード:8015]
      1. 企業概要と事業ポジション
      2. 主力事業
      3. 財務実績と成長性
      4. 代替ルート構築の実績
    4. 4. TDK株式会社 [コード:6762]
      1. 企業概要と事業ポジション
      2. 主力事業
      3. 財務実績と成長性
      4. 強みと競争優位性
      5. 磁石リサイクル事業の爆発的成長背景
      6. 今後の戦略
    5. 5. 三井物産(株) [コード:8031]
      1. 企業概要と事業ポジション
      2. 主力事業
      3. 財務実績と成長性
      4. ライナス社との関係深化
      5. 今後の戦略
  4. 市場成長予測と主要課題
    1. グローバル市場の成長見通し
      1. 市場規模の推移と予測
      2. 需要牽引要因
    2. 市場成長のグラフ
    3. 主要な産業課題と対策
      1. 課題① 精錬技術の中国独占
      2. 課題② コスト競争力の獲得
      3. 課題③ 代替技術(レアアースレス)の台頭
  5. 結論と投資戦略のポイント
    1. 2026年:「守り」から「攻め」への転換期
    2. 最終評価とメッセージ
  6. 付録:用語解説
  7. YouTube動画

レアアース(希土類)とは何か?

レアアースの定義と構成

レアアース(希土類)とは、スカンジウム、イットリウム、および15個のランタノイド元素(ランタン~ルテチウム)の計17元素の総称です。
名称に「レア(稀少)」と付けられていますが、実は地球上にそこまで希少ではなく、むしろ採掘後の分離・精錬技術が困難であることが本質的な希少性の源泉となっています。
レアアース17元素の構成 ◦スカンジウム(Sc) ◦イットリウム(Y) ◦15のランタノイド元素(La~Lu) 珍土族 =珍稀金属 (地球上の賦存量は山元作>辺河地域)

レアアースの産業用途:4大用途

レアアースは現代産業を支える「見えない重要鉱物」です。以下の4つの主要用途が、需要の約95%を占めています。

1. EV向けモーター(永久磁石)

電気自動車の心臓部である駆動用モーターには、超強力な永久磁石が必要です。ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウムなどのレアアースを含む磁石は、従来のモーターと比較して以下の特性を実現します:

  • エネルギー効率が20~30%向上
  • 同じ力で30~40%の小型化が可能
  • 高速回転が実現可能

テスラの最新モデルやトヨタのプリウス、日産のリーフなど、主流EVの大多数がこれらの磁石を採用しています。EV化が進むほど、需要は急増します。

2. 洋上風力発電(ダイレクトドライブ型発電機)

洋上風力発電所では、ギヤボックスを必要としないダイレクトドライブ型発電機が採用されてきています。このような発電機には、レアアースを含む強力な永久磁石が不可欠です。

  • 再生可能エネルギー導入の加速に伴い、需要は年率15~20%で成長
  • 単一の大型風車(15MW級)には、約600~1,000kg のレアアース含有磁石が必要

3. AI関連ハードウェア・データセンター

NVIDIA、グーグル、マイクロソフトなどのAI企業が急速に整備するデータセンターでは、莫大な発熱が発生します。その冷却システムやサーバー機器の高性能化には、レアアースが活用されています:

  • HDD(ハードディスク)の読み書きヘッド
  • 高性能チップの製造・冷却デバイス
  • 光ファイバー通信デバイス

4. 省エネ家電と産業用途

冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの省エネ家電のコンプレッサーモーターにもレアアースが使用されています。また、工作機械、産業用ロボット、医療機器など、多岐にわたる産業で活用されています。

レアアースPTM用途別需要(2025年) 45% EV向けモーター 25% 風力発電 15% AIハード 15% 家電・その他 図2:レアアース(PTM)の用途別需要比率。EV向けモーターが圧倒的シェア。


日本の戦略的対抗措置「3本柱」

中国依存からの脱却を目指す日本は、以下の3つの戦略軸で、多層的な対抗措置を展開しています。

戦略①:調達先の多角化

背景と必要性

2025年~2026年の中国の輸出制限強化により、日本が依存していた調達ルートが急速に不安定化しています。既存の対中国依存度は以下の通りです:

年度中国からの輸入比率その他の国
2020年78%22%
2023年68%32%
2026年目標40%60%

具体的な展開

ベトナムとの連携

  • ベトナムは中国に次ぐ有望な供給源
  • マイニングから精錬まで技術協力を強化中

インド国営企業との契約

  • インド国営IMFL社との長期買取契約を締結
  • 2026年から年間5,000トンの安定供給予定

オーストラリア(ライナス社)の活用

  • 非中国系の最大供給源
  • 日本企業の投資シェアを年々拡大

効果と見通し

この戦略により、2030年までに中国以外からの調達比率を60%まで高める計画です。地政学的リスク分散により、有事の際の供給途絶リスクが大幅に軽減されます。

戦略②:都市鉱山によるリサイクル

「都市鉱山」とは何か?

都市鉱山とは、廃棄された電子機器や金属製品に含まれるレアアースなどの貴金属の総称です。使用済みスマートフォン、PCのHDD、廃棄モーターなどから、高品質なレアアースを回収・精錬する循環型産業です。

日本における優位性

日本は先進国の中でも特に高い廃棄電子機器の流通量と、高度なリサイクル技術を持つ数少ない国です:

  • 年間約1,000万トンの廃棄電子機器から、理論上200万トン以上のレアアースが回収可能
  • 既存の対中国依存度を考えると、国内リサイクルで年間20~30%の需要をまかなえる潜在性

リサイクルプロセスの流れ

廃棄製品回収 → 分解・破砕 → 物理的選別 
  ↓
湿式精錬(浸出・分離)→ 高純度化 → 磁石・その他製品化

環境・経済的メリット

  • CO2削減:天然鉱石採掘と比較して、CO2排出量を70~80%削減
  • 採掘リスク回避:深海採掘のような環境破壊リスクがない
  • 経済性:スケール拡大により、採掘コスト競争力を逐次改善

都市鉱山リサイクルプロセス 廃棄製品 回収 分解・破砕 物理的選別 湿式精錬 高品質 希土類 年間1,000万トンの廃棄電子機器から200万トン以上の希土類回収ポテンシャル Carbon Neutral: CO2排出量70~80%削減、採掘リスク回避 図3:都市鉱山からのレアアース回収プロセス。環境負荷低減と経済性を両立。

戦略③:国内資源の開発(南鳥島プロジェクト)

南鳥島について

南鳥島は、小笠原諸島の最も東にある日本最東端の領土で、東京から約1,800km 離れた太平洋上に位置しています。この島の周辺海域に、世界中の使用量の数百年分に相当する莫大なレアアース泥が埋蔵されていることが、2012年の調査で判明しました。

プロジェクトの進捗状況

年度段階内容
2012-2015探査調査埋蔵量・鉱質調査
2016-2020基礎研究サンプル採取・分析
2021-2025試験掘削準備採掘・精錬技術開発
2026年1月~試験掘削開始本格的な採掘試験スタート
2027-2030スケールアップ商業化へ向けた調整
2030年以降商業化本格的な採掘・供給開始

採掘技術の課題と対策

課題1:深海採掘の困難性

  • 水深6,000m近い深海での作業
  • 潮流・天候の影響が大きい
  • 環境モニタリングの必要性

対策:

  • 無人採掘機(ROV: Remotely Operated Vehicle)の開発
  • AIによる自動制御システム
  • リアルタイム環境モニタリング

課題2:コスト競争力

  • 天然採掘(年50~80ドル/kg)と比較して、当初は2~3倍のコスト
  • 技術改善で10年内にコスト競争力獲得を目指す

課題3:精錬技術

  • 深海泥から高純度レアアースへの精錬技術が未確立
  • 日本国内の商業規模精錬所建設が急務

南鳥島沖合のレアアース泥採掘エリア 南鳥島 水深 5,700~6,300m 埋蔵量:世界使用量の300年分以上 | 試験掘削開始:2026年1月 図4:南鳥島沖のレアアース泥採掘エリア。世界有数の埋蔵量を誇る。

第3章:主要関連企業の詳細分析

日本のレアアース産業チェーン全体を支える主要5企業を、それぞれのビジネスモデルと戦略から詳細に分析します。

1. 信越化学工業(株) [コード:4063]

企業概要と事業ポジション

信越化学工業は、レアアース磁石の世界最大手級企業です。単なる磁石メーカーではなく、原料のレアアース分離から磁石製造まで一貫した垂直統合体制を構築しており、業界の中でも最強のポジションを占めています。

主力事業

  • EV・風力発電向け永久磁石:圧倒的なシェア(世界シェア約30%)
  • 半導体関連材料:化学材料としての高い基盤
  • 化学品全般:多角化により経営の安定性向上

財務実績と成長性

指標2024年3月期2025年3月期2026年3月期(予想)
売上高2.3兆円2.5兆円2.7兆円
営業利益率15.2%16.8%17.5%
ROE18.5%20.1%21.0%

強みと競争優位性

  1. 垂直統合体制:原料調達から製品製造まで一貫体制により、コスト競争力と品質管理に優れる
  2. 顧客基盤:半導体材料で培った世界の主要自動車メーカーとの深い関係
  3. 価格変動への耐性:磁石の設計工夫でレアアース使用量を年率3~5%削減

今後の戦略

  • レアアースレス磁石への投資:次世代技術による汎用化
  • EV向けモーター事業の拡大:次世代EV用ドライブモーターの開発加速
  • 東南アジアでの製造拠点拡大:中国リスク軽減

投資家への評価

総合評価:★★★★★(5つ星)

安定した収益基盤と、成長分野(EV・再生可能エネルギー)への適合性の高さから、長期投資対象として高く評価できます。

2. DOWAホールディングス(株) [コード:5714]

企業概要と事業ポジション

DOWAホールディングスは、日本における「都市鉱山リサイクル」の先駆者です。廃棄電子機器からの高度な湿式精錬技術により、22種類の元素を同時に回収できる唯一無二のプレイヤーです。

主力事業

  • 都市鉱山リサイクル:金、銀、銅、レアアース、レアメタルなど22元素の回収
  • 非鉄金属精錬:湿式精錬プロセスによる高品質化
  • 環境関連事業:廃棄物処理・環境浄化

財務実績と成長性

指標2024年度2025年度2026年度(予想)
リサイクル事業売上450億円580億円750億円
YoY成長率18%29%30%
粗利益率22%26%28%

強みと競争優位性

  1. 技術的優位性:22元素同時回収能力は世界でも稀有
  2. スケール効果:年1,000万トン超の廃棄電子機器処理能力
  3. 環境付加価値:「グリーンなレアアース」として高い評価

成長の背景

  • 貴金属相場の上昇:金・銀価格の上昇がリサイクル採算性を大幅改善
  • 企業のサステナビリティ志向:リサイクル製品に対する需要急増
  • 中国規制の強化:リサイクルへのシフト加速

今後の戦略

  • 処理能力の倍増:新設備投資により2,000万トン処理能力へ拡大
  • 国際展開:タイ、ベトナムへのリサイクル拠点展開
  • 付加価値製品化:リサイクルレアアースから直接磁石製造へ

3. 豊田通商(株) [コード:8015]

企業概要と事業ポジション

豊田通商は、トヨタグループのサプライチェーン全体を支える総合商社です。レアアース調達分野では、中国以外の供給源(ベトナム、インド)の確保と代替ルート構築において、最も実績を上げている企業です。

主力事業

  • 海外鉱山権益の確保:インド、ベトナムでの開発・買鉱権確保
  • 代替調達ルート構築:中国以外の多元的供給網構築
  • サプライチェーン最適化:トヨタグループの安定調達支援

財務実績と成長性

指標2024年度2025年度2026年度(予想)
レアアース関連売上350億円420億円520億円
営業利益42億円58億円78億円
営業利益率12.0%13.8%15.0%

代替ルート構築の実績

インド連携

  • インド国営IMFL社との長期買取契約締結(年5,000トン、10年契約)
  • インド国内での精錬技術移転協力

ベトナム展開

  • ベトナムの新興マイニング企業との共同開発
  • ハイフォン経済特別地区での精錬コンビナート建設中

4. TDK株式会社 [コード:6762]

企業概要と事業ポジション

TDKは、HDD(ハードディスク)や車載向け磁石の製造企業です。近年、使用済み磁石から高品質なレアアースを抽出する「磁石リサイクル技術」を商用化し、新たな成長エンジンに育成中です。

主力事業

  • 磁石製造:HDD、EV向け磁石
  • 磁石リサイクル:使用済みHDD・モーターからのレアアース抽出
  • 電子部品:インダクタ、コンデンサなど

財務実績と成長性

指標2024年度2025年度2026年度(予想)
磁石事業売上1,200億円1,350億円1,550億円
リサイクル関連売上28億円65億円140億円
YoY成長率(リサイクル)68%132%115%

強みと競争優位性

  1. HDD廃棄品の供給源:年間数十万トンのHDD廃棄品からの回収
  2. 磁石リサイクル技術:独自開発による高純度レアアース抽出(98%以上)
  3. AI・IoTへの対応:データセンター市場の拡大で需要急増

磁石リサイクル事業の爆発的成長背景

  • PC・HDDの廃棄サイクル短期化:年々増加する廃棄HDD
  • データセンター拡大:AIブームによるサーバー増設とHDD需要増
  • 採算性の向上:リサイクル技術改善でコスト低下

今後の戦略

  • リサイクル施設の大型化:年1万トン処理能力へ拡大
  • 次世代リサイクル技術開発:EV廃バッテリーからのレアアース回収
  • グローバル展開:タイ、メキシコへのリサイクル拠点設置

5. 三井物産(株) [コード:8031]

企業概要と事業ポジション

三井物産は、オーストラリアの Lynas Rare Earths(ライナス社)への投資を通じて、非中国系供給源の最大級パートナーとなっています。資源価格変動に対する投資ポートフォリオ管理により、安定的な高株主還元を実現しています。

主力事業

  • ライナス社への投資:エクイティスポンサーシップ(議決権約15%)
  • 資源開発ファンド:グローバルな鉱物資源投資
  • 商社事業全般:食糧、化学品、エネルギーなど

財務実績と成長性

指標2024年度2025年度2026年度(予想)
資源・エネルギー事業利益3,800億円4,200億円4,600億円
ライナス関連利益240億円310億円390億円

ライナス社との関係深化

背景

  • ライナス社はオーストラリアで唯一の非中国系レアアース大手
  • 生産能力は年50,000トン(世界シェア約15%)
  • 2023年から三井物産が筆頭スポンサーに

戦略的効果

  • 中国以外の安定供給源確保
  • 日本への調達シェア拡大(年間8,000~10,000トン)
  • ライナス社の経営安定化支援

今後の戦略

  • ライナス社の生産能力拡張:2028年までに年80,000トンへ増産
  • マレーシア精錬施設の拡大:中国に代わる精錬ハブ化
  • 調達シェア拡大:2030年までに日本への供給比率を15%に引き上げ

市場成長予測と主要課題

グローバル市場の成長見通し

市場規模の推移と予測

世界のレアアース金属市場は、今後5年で急速な成長が見込まれています:

2025年:約130億米ドル
2026年:約145億米ドル(+11.5%)
2027年:約165億米ドル(+13.8%)
2028年:約190億米ドル(+15.2%)
2029年:約215億米ドル(+13.2%)
2030年:約245億米ドル(+14.0%)

CAGR(年平均成長率):2025-2030年で約13.4%

需要牽引要因

  1. EV化の加速(世界EV販売台数は年率20%成長)
  2. 洋上風力発電の拡大(再生可能エネルギー投資の増加)
  3. AI・データセンター需要(NVIDIA, Google, Microsoft等の投資拡大)
  4. 省エネ家電の普及(先進国での置き換え需要)

市場成長のグラフ

世界レアアース市場規模予測(2025-2030年) 市場規模 (億米ドル) 年度 2025 2026 2027 2028 2029 2030 100 200 300 130 145 165 190 215 245 図5:世界レアアース市場規模予測。年平均成長率(CAGR)13.4%で2030年に245億米ドル規模へ。

主要な産業課題と対策

課題① 精錬技術の中国独占

現状

  • 採掘後の「分離・精錬」工程は、依然として中国の技術的優位が高い
  • 世界の精錬能力の約85%が中国で集中
  • 高純度化に必要な化学技術に高い参入障壁

必要な対策

  1. 日本国内での商業規模精錬所建設:2028年までに年5,000トン規模を目指す
  2. 国際連携:マレーシア(ライナス社施設)、インドでの精錬能力拡張
  3. 技術開発:大学・研究機関との産学連携による新規精錬法開発

投資規模:国・企業合わせて年1,000~1,500億円程度が必要

課題② コスト競争力の獲得

現状

  • 国内資源(南鳥島泥)の採掘コスト:年200~250ドル/kg(深海採掘)
  • 天然採掘(中国・ベトナム):年50~80ドル/kg
  • 約3倍のコスト差が存在

技術的解決策

  1. 自動化採掘システム:AI・ロボット技術による採掘コスト削減
  2. 採掘技術の効率化:2030年までに年100~130ドル/kg へ低減目標
  3. スケール効果:処理量を年1万トン → 5万トンへ増加

課題③ 代替技術(レアアースレス)の台頭

リスク要因

  • ホンダが開発する「磁力なし誘導電動機」
  • 日産の「フェライト磁石搭載EV駆動モーター」
  • 性能面でレアアース磁石に迫る技術開発が加速

対抗戦略

  1. 次世代磁石開発:性能 + コスト + サステナビリティで圧倒
  2. レアアース削減設計:磁石設計工夫で使用量を年3~5%削減
  3. グリーン価値の付加:リサイクル由来レアアースの付加価値化

結論と投資戦略のポイント

2026年:「守り」から「攻め」への転換期

2026年は、日本のレアアース産業にとって「守り」から「攻め」に転じる歴史的な転換点です。

転換の証

  • 南鳥島での本格的試験掘削開始(2026年1月)
  • 都市鉱山リサイクル企業の急速な成長
  • 調達先多角化の実績化

最終評価とメッセージ

日本のレアアース産業は、これまでの「中国依存」から「資源自給」へと転換する、エキサイティングな時期を迎えています。南鳥島での採掘開始、都市鉱山リサイクルの急速な成長、調達先の多角化――これらすべてが、同時進行で進展しています。

この産業転換の波に乗る日本企業は、今後10年で世界有数のレアアース企業への脱皮が十分に可能です。特にDOWAホールディングスは、環境規制が強まる世界市場において「グリーンなレアアース」として高い付加価値を持つようになるでしょう。

投資家にとって、この産業は「社会の必要性」「企業の成長性」「ESGへの適合性」の3つを兼ね備えた、まさに次世代を代表する投資テーマなのではないでしょうか。

付録:用語解説

レアアース(希土類)
スカンジウム、イットリウムとランタノイド15元素の計17元素。EV向けモーターや風力発電機の磁石に不可欠。

永久磁石
外部磁場がなくても磁力を保持する磁石。ネオジム磁石などが代表的。

都市鉱山
廃棄製品に含まれる貴金属・レアアースなど。年1,000万トン超の廃棄電子機器から回収可能。

湿式精錬
浸出・分離などの化学プロセスによる精錬方法。乾式精錬より環境負荷が低い。

CAGR
年平均成長率(Compound Annual Growth Rate)。複数年の成長率を統合した指標。

ROE
自己資本利益率(Return on Equity)。企業の収益性を示す重要指標。

ダイレクトドライブ型
ギヤボックス不要の直接駆動方式。洋上風力発電で採用される。

PTM磁石
Permanent Triode Magnet の略。希土類を含む高性能永久磁石の総称。

免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではございません。投資判断は自己責任でお願いいたします。記載内容は作成時点の情報に基づいており、今後の市場変動により予測と異なる可能性があります。

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